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極み・雨男【過去の日記より】

 私は雨男である。

 科学的根拠があろうがなかろうが、これは間違いなく真実だ。過去、何度、予報に反して本番に雨を降らせたことか・・・。
 数年前の台風の当たり年には、上陸または最接近が5回本番日にあたり、そのうち4回を中止に追い込んでしまった。山小屋の本番では、準備のため小屋から私が出入りするたびに雨が落ちたりやんだりするのを見た少女が、あの人が出ると雨が降るよ、と母親に耳打ちするのを聞いた。桶川の野外本番では、演奏開始直後に聴衆が全く見えなくなるほどの大雨に見舞われ、円卓を囲んで食事中のずぶ濡れになったお客さんが屋根付きの舞台上へ大挙押し寄せ、演奏中の僕らの背後にすし詰めで立っているという変な本番もあった。

 だから、江波氏から「3月上旬の夜の野沢のゲレンデでの演奏依頼」が来た、と聞いたときには、雨の時はどうなるんですか雪の時はどうなるんですか!と食い下がるように訊いたのだ。

 そして3月10日、その日はやってきた。

 とはいえ実は今年(2007年)に入って、私は雨男ではなくなっていた。雨が降らないばかりか予報に反して晴れたりして、きっと「雨男菌」がとれたんだ、なんて半ば本気で思っていた。この日も現場に到着した昼の時点で気温も日差しも暖かくて、長Tシャツ1枚でセッティングできるほど、まさに暖冬!というか小春日和だったのだ。現地の人も今日はオッケーでしょうと言うし、慣れない雪上のセッティングを終えた時点で八割方仕事は終わったようなものだった。
377081972_244.jpg
 今回は野沢温泉村挙げての「灯明祭り」の中に初めて音楽イベントをということで、いつも村にお世話になっている僕らに依頼が回ってきたものだ。「灯明」だから夜というわけで、日も落ちてすっかり暗くなって、祭りが始まった。

 今回の寒さ対策。山岳用の保温下着上下に長Tシャツを着て背中にホカロンを貼りその上に厚手のニットのベスト、その上にいつもの舞台用シャツとベスト。靴下は2枚重ね。
 さすがに気温が下がってきたものの風もなく、何しろ澄んだ空気を吸いながら気分良く演奏はスタートした。
377081972_143.jpg
1曲2曲過ぎただろうか、照明に照らされてきらきら光るものが。空気中の水蒸気が凍るダイヤモンドダストかな?きれいだなあ、幻想的だなあ。そう思っているうちに、ひらひら漂っていた水蒸気の粒はみるみる大きくなって、上から下に軌跡を残すように落ち始めた。これを気象用語で「みぞれ交じりの雨」と呼ぶ・・・。

 風雲急を告げる・・・いや、開始前に告げてくれりゃあスタートしなかった、始まってから降るなバカ野郎!一瞬背筋がぞくっとして、「雨男だった頃の自分」を思い出し、この先の展開を考えるとなんだか気の遠くなる思いがした。案の定雨脚はだんだんと激しくなり、おまけに風が横殴りに吹き始めた。ガタガタと譜面台が揺れ、譜面台にクリップで固定していた楽譜もバサバサと音を立てて羽ばたき始めた。
 そこへ突風第1波。右のほっぺたを平手打ちされたような気がしたと思ったら、楽譜がピュッと夜空に舞い上がった。あわてた村の職員が雪上で楽譜を追いかけ駆けだす。鍵盤は雨でみるみる濡れていき、指を置くたびにツルーヌルーと滑って定まらない。手もしっとりと濡れて急激に冷え、風が吹くからさらに体感温度が下がって指先から徐々に感覚が薄れていくのがはっきり分かる。かたや、江波氏はその見事に突き出たお腹を上手に使ってなんとか譜面台の動きを制御し、風に吹かれて音がかすれたりしてもとっさに体の向きを変えたりして必死で音をつないでいる。
 突風第2波。今度はまとめてあった楽譜がファイルごと飛んで中身が紙吹雪のようにゲレンデに。3人ほどの職員がわらわらと散り、腰をかがめてあたふたと拾い集めている。曲間に職員の一人が、わしづかみにした楽譜を必死の形相で渡すので、いいえあなたが悪いのではないですよ、と精一杯の笑顔を作ろうとするも頬がかじかんで笑えない。もうやけくそで楽譜をクリップで譜面台にくくりつけ次の曲を弾き始めると、そのやけくそ勢いで譜面台の上辺だけに楽譜を留めたために、楽譜が下から風にあおられてすっかり裏返って上に反転し、また戻ってはまた反転しを、その残像で立体的に見えるほどのものすごい速さで繰り返し、ピ~ラピラしてどうにも止まらない。客から見てもこれが楽譜だとは到底思えないだろう。そしてその曲が終わりに近づきエンディングの終止形の和音を経由して江波氏が最後の音を(本来なら)感動的にのばしたとき、突風第3波。江波氏の譜面台がゆっくりと前に傾いて、まるでノックアウトされた直立不動のボクサーがぼう然とリングに倒れる映像のように、バッサン、とまるごと倒壊した。そのコント風タイミングのあまりの絶妙さと真面目にやってる僕らの対比に、お客さんはさすがに気を遣い笑いこらえて逆に静まりかえり、伸ばしたオカリナの音と横倒し譜面台と散乱した楽譜と、そして横で相変わらずピ~ラピラの私の楽譜とが、なんとも静かで赤面チックな間をかもし出していた。


 どうにか演奏を終え、控え室に転がり込みしばらくして外を見やると、風はすっかりやみ、雨もあがって星なんぞが出ているではないか。これが「山の天気は変わりやすい」で説明つくものなのか?きっと自分は前世で何か悪いことをしたのだろう、または踏みつぶされたカエルだったのだろう・・・・さすがにそんなことを考えふけっていたら、ふと、あることを思い出した。

オレの親父の名前は「雪雄」である。
雪雄の子だから雨男?

・・・まったく、シャレが効きすぎている。





※以上は全て誇張無しのノンフィクションであり、登場人物はすべて実在します。
.01 2013 コメント0

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